宇都宮商工会議所の歴史
会報でみる130年
商工うつのみや
『商工うつのみや』でたどる1970年代
『商工うつのみや』の前身である『宇都宮商工会議所ニュース』(以下『会議所ニュース』)は昭和31年8月の第1号から昭和43年3第58号まで発行されました。(前回記事で紹介)
『商工うつのみや』は43年4月に第59号から始まっています。通算号数を受け継いだ、会報のリニューアルでした。
内容は前身の『会議所ニュース』同様、宇都宮市の経済情報や全国の情勢、新しい制度法律の告知・解説、識者による経済コラム、それに会議所からの告知などが掲載されています。
また、発行期間が昭和43年から昭和56年でしたがこれは高度成長期からニクソンショックやオイルショックによる不況期に向かっており、大きな変動の時代でした。
『商工うつのみや』紙面の記事も、前半は経済活況を伝える記事が目立ちます。しかし昭和49年ごろから、きびしい経済状況の中でいかに経営するかといった論調の記事が増えていきます。
今回は、そのような時代背景の中で特徴的な記事を3つご紹介します。
「無担保で年利7%小企業経営改善資金」
(昭和48年3月109号)
無担保・無保証・低金利の小規模事業者経営改善資金(以下マル経融資)は、昭和48年10月にスタートしました。この記事は会報初の紹介記事でした。
【要旨】
従業員が5人以下の小企業は、日本に350万社に達します。小企業は経営内容が不安定であること、業歴が浅いものが多いこと、担保能力が乏しいことなどから資金確保の面できわめて困難な立場に置かれています。
また商工会議所が経営改善普及事業を行っていますが、金融面での助成が必ずしも十分ではないことなどが大きな障害となっています。
小企業に関する課題を積極的に解決し指導と金融の一体的運用を図ることで経営改善普及事業の効果を高めるため、経営改善を図る小企業に対して無担保、無保証で低利の資金を融資する制度「小企業経営改善融資制度」が新設されます。
現在も多くの方にご利用いただいているマル経融資は、小企業経営改善資金としてスタートしました。同年8月の114号には「無担保、無保証の小企業経営改善資金、10月から受付開始」と続報が掲載されるなど、小規模な企業の資金調達ニーズが高かったことがうかがえます。オイルショックと重なる時期であったことも普及を後押ししました。その後は制度の内容が時代にあわせて変わり、現在のマル経融資に至っています。
金融制度関連ではもう一つ、倒産防止共済制度(通称セーフティ共済)もこの時期に登場しました。昭和53年2月の168号に「新たに創設された倒産防止共済制度が4月からスタート」として紹介記事が掲載されています。この制度は、中小企業倒産対策の目玉の一つであり、それだけ当時の経済状況が悪かった証でもあります。この制度もマル経融資と同様に、現在も中小企業を金融面で支え続けています。
「大型店対策決る 消費者に魅力ある商店街を」
(昭和48年11月、117号)
昭和48年頃から、大資本の大型商業施設が宇都宮市内に進出するようになり、商店街は大きな危機感を覚えています。これは宇都宮だけではなく全国の商店街が抱えていた課題であり、国も対策として通称「大店法」を作り、中小小売業の保護を打ち出しています。その中で商工会議所は、商店街と大型商業施設との調整役という重要な役割を担っていました。
大型店進出には、当時の既存商店は強い危機感を抱いていたようです。記事には具体的な対策まで言及されていました。また会報では、その後も大規模店舗の進出にいかに対抗するかという論説が折に触れて掲載されていました。
【要旨】
宇都宮市の商圏には昨秋から一年の間に11店もの大型店が進出。これらによって当市商圏の縮小を余儀なくされようとしており、今やまさに「都市間競争」と呼ばれる激動期に突入した。
当市にも大型店進出の計画が進められている。今後、当市が消費者にとって魅力的で集客機能の強い商業都市として発展し、都市間競争に打ち克つためには、重点施策を定め、商工会議所や商店街連盟、その他商業団体が結束して対応しなければならない。
一方で読者から「東京から越してきたが、宇都宮は物価も高く買物も不便。大型店の進出を待ちかねていたのに、会議所はなぜ反対するのか」という手紙が届き、当時の専務理事が会議所の立場などを説明する記事を掲載したこともありました(117号)。記事では「(物価上昇は全国的な傾向であって)統計では宇都宮市の物価は高くない。大型店の出店は時代の流れだが、(現在の人口増加率に対して売場面積の増加率のほうが圧倒的に高いので)このままでは過当競争に陥る。現在の商店街と共存共栄を目指す必要がある」と、ていねいに説明しています。
「消費者は本物指向 即応した商法の実践を」
(昭和53年4月、170号)
日本の経営コンサルティング業界のパイオニアと呼ばれる田辺昇一氏による記事です。
【要旨】
景気が悪い、売れないという時代に、儲けている店もある。個人の購買力はオイルショック以降上がっている。その人々にいかに買ってもらうかが勝負どころだ。
生活者の消費態度は、他人に左右されない「個性化」、品質本位の「ホンモノ指向」、購入するために資金計画をきちんと立てる「計画化」、家計全体の中できちんとやりくりする「合理化」がある。これに対応できた店が儲かっているのである。むやみな安売りでは、もう売れない時代だ。